【読書】収奪的経済が諸悪の根源 – 国家はなぜ衰退するのか
この本を読む前にジャレド・ダイヤモンドの「銃・病原菌・鉄」を読んでいて、人類が繁栄した経緯についての言及があり、氏の解説に納得していたのですが、本書はそれに対しての反論も含んでいたので、それに関しても感想を書きます。
包括的経済と収奪的経済
本書はアメリカとメキシコの国境を跨いで存在しているアメリカ合衆国・ノガレス州、そしてメキシコ・ノガレス州という地域の対比を起点に、収奪的経済と包括的経済国家を解説している。
ラテンアメリカや北朝鮮、アフリカなどに見られる、奴隷制度や私有財産を認めない制度、プランテーションといった、指導者および一部のエリートのみに利益が集約する経済を収奪的経済、アメリカのような教育の自由、私有財産を持つ権利、特許や資産が侵されない保証をベースとした包括的経済がある。
2つの経済の決定的な違いとして、国民に対するインセンティブにある。
収奪的経済では国民の努力に対する報酬が約束されない状態のため、生産性の向上や挑戦するモチベーションを削いでしまう。
一方、包括的経済では国民の生産高に対して報酬が約束されることにより、新しいことに挑戦するモチベーションが生まれるため、長期的な国家の発展に繋がる。
ところで、国家が繁栄した理由の一つとして地理説が挙げられる。「銃・病原菌・鉄」もそのことに言及していて、肥沃な土地によって古代文明が繁栄したという説を推している。しかし、本書はその説は有力だとしつつも、資源が乏しいにも関わらず多数の現代国家が繁栄している理由を説明できないとして否定的である。
収奪的経済を採用する国家が発展しているワケ
そうはいっても中国などの国は、個人が土地を所有することを認めてないし、政府に反抗的だった超大手企業の会長が謎の失踪を遂げることもある。
そんな収奪的経済を色濃く残した国が、なぜ強大な力を持っているのか。著者は「農業から工業化」と「権力の集権制度」が理由であると解説する。
工業化によって生産の効率性が高まったことと、その動きを国家レベルでコントロールできる体制は、適切な資源配分を行えば発展を促す。
しかし、それは資源を適切な場所に移動させて効率を上げたというだけで、もともとの資源を食い潰しているに過ぎない。イノベーションを引き起こせないという特徴からして、本質的に富の総量が増えることはない。
本書では「眠れる獅子の中国」と「鎖国の日本」について言及されているが、もし日本が包括的経済を見習う形で文明開花を進めなかったら、今こうしてnoteに好き勝手に感想を書ける立場になかったかもしれない。
実生活に応用
本書は国家について解説されていたものの、内容は組織論そのものであり、会社や少数グループを運営する場合にも大いに参考になる。
組織の上層に位置する人間は、ともすれば軌道に乗ったサービスから少しでも多くの創業者利益を得ようとする。それはファーストペンギンの特権なので気持ちは分かるのだが、それでは次に繋がらない。(M&A目的で起業する人もいるが…)
知恵を振り絞って動いてくれているのは実働部隊であって、第2、第3のプロジェクトでも伸び伸びとした発想を生み出してくれるような待遇を用意する必要がある。
何よりも「この会社と長く付き合おう」と思ってもらえる環境づくりが大切だ。このご時世、IT業界で何年も同じ会社と働いてくれるスタッフやクライアントはマジで大事にしたい。
従業員やクライアントによって利害は様々だが、どういった見返りが期待されているのかをしっかり観察して用意できるようになりたい。
