行動経済学を活用して承認されるパワポ術を考えた
ノーベル経済学賞を受賞した行動経済学者ダニエル・カーネマンが書いた本「ファスト&スロー」を読み返しました。
パワポにも応用できると思ったので、本書で紹介されている概念をもとに承認される(?)パワポの作成方法を紹介します。
結論
相手に不要な思考を巡らせないよう、重要なキーワードはくり返して、その単語に親しみを植え付ける。平易かつ視認性の高いスライドを心がける。
具体策は以下の通り:
- パワポは4pにまとめる(A4裏表に2pずつ)
- パワポの色をブルー基調にする
- 簡単な言葉を用いる
- 重要ワードを絞って多用する
- 担当者の負担を減らすワード → 丸ごとお任せ
- 危機感を煽る具体的なエピソード
考えのもとになった概念を簡単に説明します。
認知容易性

情報が理解しやすいと、それが心地よさや親しみやすさ、好意、安心感につながる傾向のことです。
人は基本的に慣れ親しんだものが好き。そのとき人は少々だらけていて、あまり深く考えようとしない。逆に認知負担を感じると疑り深くなり、普段より努力を払い、緊張し、エラーを犯しにくい。前に見た単語を再び見ると認知が大幅に容易になり、それが「なじみがある・よく知っている」という印象につながる。誰かに嘘を信じさせたい時の確実な方法は、何度も繰り返すことである。聞き慣れたことは真実と混同されやすい。パワポは青か赤。簡単な言葉で間に合う時は難解な言葉を使ってはならない。
ダニエル カーネマン「ファスト&スロー」
もっとも、この概念はその場でのプレゼンで効果があっても、時間が経って複数の人間の目に留まったら効果がなくなる可能性はあります。
プライミング効果

最初に見た単語や情景に後の行動が引きずられる現象です。
高齢者関係の単語を多く扱ったグループは実験後に歩く速さが遅くなった
ダニエル カーネマン「ファスト&スロー」
学校補助金の総額案に対する賛成票は、投票所が学校の場合の方が多い
実験結果から、人は最初に見た情景が頭に残ったまま、関係のない対象にまで余韻を引きずるという仮説が立ちます。
活用方法として以下が考えられます:
- 売りたいサービスがうまく稼働してる場所で交渉
- サービスを利用している人の笑顔の写真を多用
フレーミング効果

同じ情報でも表現方法を変えることで異なる判断をしてしまう現象です。
表示されている通りにしか見ない「見たものがすべて」な現象。同じ情報でも、提示の仕方が違うだけで、違う感情をかき立てることが多い。
ダニエル カーネマン「ファスト&スロー」
「術後1ヶ月の生存率90%」の方が「術後1ヶ月の死亡率10%」より心強い
「90%無脂肪」の方が「脂肪含有率10%」よりダイエット向きな気がする
人の感性は複雑なので、事例を載せても受け手が違う方向に解釈することも考えられます。必要な要件を満たす保証があれば、余計なことは書かない方が良いかも?
まとめ
語弊を恐れずに言うと、パワポの読み手は新しいことは求めていないのです。
出来るならこれまで通りの方法を続けたいですし、新しいことを始めるにしても従来の知識に置き換えて物事の価値を見定めます。
最後に武田所長の著書「スモールビジネスの教科書」より印象的な言葉を引用します。
革新的な商品やサービス導入のために「社内説得」という高い壁を乗り越えなければならず、担当者は多大なる苦労を強いられる。
武田所長「スモールビジネスの教科書」
逆に成功したとしても、担当者自身には何の得もない。
自分の給与が上がるのか?
自分の仕事は楽になるのか?
休日は増えるのか?
そんなことはどれも、担当者の身には起きない。
「自分は普通に求められているものを普通に納品する」
これでよい。
担当者は、上司の命令で我々のパワポを読んでいます。
理想を熱く語ったところで「早く終わってほしい」としか思ってません。
先に紹介した行動経済学の概念は「なるべく担当者の負担を増やさず、かつ担当者や会社が理解できる普通に良いものを提供する」という行動に帰結するのだと思います。
